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政局を揺らす"小池劇場"の主舞台?

黒い排ガス、戦前の建物……
築地に行って見えた
本当の「移転問題」(前編)

築地

《本記事のポイント》
・ そもそも築地が危ないから移転問題は始まった
・ 豊洲を嫌がる業者の心配は「安全」より「立地」
・「築地か豊洲か」の判断は僅差の問題だった


築地・豊洲は2017年、政局を揺らす"小池劇場"の主舞台となる。

7月に行われる東京都議選では、小池百合子・東京都知事率いる地域政党「都民ファーストの会」が、都議会の過半数となる候補を擁立すると言われている。ここで小池新党が大勝すれば、かつての「大阪維新の会」のように、地方発で国政を揺らす存在にもなり得る。

豊洲市場の移転問題が、その都議選で争点になる可能性が高い。

豊洲市場は、ガス工場跡地であり、土壌汚染が懸念されていた。そこに1月、「地下水から環境基準値を大幅に超えるベンゼンが検出された」ことが発表され、移転は暗礁に乗り上げつつある。

しかしここで、問題の原点に立ち戻りたい。そもそも築地が危ないから移転問題は始まったのだ。いったいどのような危険があるのか、記者は築地を訪ねた。


◎車の行き交いはまるで東南アジア!?

「築地市場駅」から5分ほど歩いて市場内に入ると、不思議な光景が目に飛び込んできた。トラック、バイク、ターレという小型車、観光客が、四方八方に、無秩序に行きかっている。もちろん信号もない。東南アジアやインドなど、発展途上国の交差点で似たような光景を見たことがある。

「よく衝突しないな」と思って見ていたが、どうやら年に300~400件も交通事故・接触事故が起きるという。この市場は、元々、鉄道で荷を運んでいくように導線が設計されている。車で出荷物を運ぶようにはなっていないのだ。

この交通の問題が、築地の危険性として指摘されていたものの一つだ。


◎目視できるほど黒い排気ガス

車両はお互いに衝突しないように、進んだり止まったりを繰り返す。すると、排気ガスも増える。大量に行き交う大型トラックからは、黒い煙がもくもく出ているのが目視できる。

記者はこれを思いっきり吸ってしまい、咳き込んで、喉を痛めてしまった。魚の匂いと一緒に吸い込んでしまった時は、吐き気を催してしまった(ちなみに記者は、魚は好きだ)。

豊洲の"地下"で検出されたベンゼンは、排気ガスに含まれる物質だ。築地のベンゼンは、空気中に漂い、食品に付着することが危惧されている。調査によると、空気中のベンゼンは、豊洲よりも築地のほうが高濃度だという。さらに、豊洲市場は閉じられており、外気に触れない設計になっている。


◎記者のズボンにかかった「黒い水」

衛生面で言えば、市場の床にも問題がある。

アスファルトのくぼみに、水溜りができており、そこに無数の車がタイヤを踏み入れる。水溜りに沈んでいる、紙か、発砲スチロールの白いかけらを見ると、水が黒く濁っているのが分かる。目の前の深めの水溜りに車が通った時には、記者の服にその水がかかった。築地では、この水しぶきが、食品にかかることが危惧されている。

衛生面の問題といえば、市場内に鳩やカラスが自由に出入りしていた。ねずみやゴキブリも多いという。


◎時々部品が落下する戦前の建物

危険性のきわめつけは、老朽化した建物だ。

写真の通り「戦時中の工場みたい」という印象を持ってしまう。平屋建ての「水産物部仲卸業者売場棟」などは、1934年築。戦時中どころか戦前の建物だ。1メートルの長さの鉄板や、長さ15センチのコンクリート片が落ちてくるという事故もあった。

東京都千代田区にある同じ1934年築の「九段会館」では、東日本大震災の震度5強の揺れで1階ホールのつり天井が落下し、2人が死亡、31人がけがをしている。


◎豊洲とどっちが危ないのだろうか……

こうした様々な危険から、市場の再整備は急務とされていた。しかし、市場を運営しながら再整備工事を行うことは、粉塵が食品に混ざるなどの危険があるため、豊洲への移転が決まったのだ。

豊洲の危険性と言えば、「食品には触れない地下水に、飲んでも大丈夫な程度の量の有害物質が出た」という程度のものだ。冷静に考えれば、築地でこのまま市場を運営する危険性の方が高いかもしれない。

ある卸売り業者は、記者に「とっとと移転しろよ。小池は何やってるんだ。選挙のことばっかり考えて……」とぼやいた。


◎移転反対派の心配は「安全性」ではない!?

一方記者は、市場で働く卸売業者の中で、「豊洲移転すべきでない」と考える人の声も聞いてみた。

意外なことが分かった。移転に反対しているという業者に「有害物質への不安ですか?」と聞くと、多くがピンと来ていない様子で、「いや、と言うよりも、商売がしにくくなるよね」と返してくるのだ。当事者たちの主な不満の所在は、メディアが騒ぐ「安全性」とは違う所にあるようだ。

「豊洲だと立地も悪くなるしね。売り上げが1~2割は落ちるかもしれないよ」
「小さな魚屋さんとかは来なくなっちゃうんじゃないの?」

声をかけた卸売業者からは、こんな声が相次いだ。

この立地というのは主に、料理屋などが密集する銀座との距離のことだ。銀座の中心街から、築地市場までは1キロ程度だ。一方、豊洲市場まで4キロほどの距離となる。

「たった3キロの違い」と思うかもしれないが、自転車に大きなかごを載せて買出しに来ていた銀座の料理人にとっては、大きな差だ。車でのルートも、築地市場へは何通りかの行き方があるが、豊洲市場へは、現時点で「晴海通り」の一本しかルートがない。午前中は卸売業者のトラックで渋滞する可能性もある。

豊洲移転に反対している卸売業者は「この不便さで客足が減れば、売り上げが減るのではないか」と恐れているのだ。


◎「築地か豊洲か」の判断は僅差の問題?

また、築地市場移転が決まったために、廃業を決めた銀座の寿司屋などもいるという。築地市場がなくなれば、「銀座の繁栄」が少し衰える可能性はある。

また、「築地直送」などと書かれた魚はおいしそうに見えるように、「築地」という名前には世界にも通用するブランドイメージがあり、「のれん」のような付加価値がある。人を集め、お金を集めるという意味では、東京都の"資産"とも言える。市場を全て築地に移し、これを手放すもったいなさは、少なからずあるだろう。

このように、「築地に残るか、豊洲に移転するか」という判断は、メリット・デメリットが拮抗する難しい問題であったことは確かなようだ。(次へ続く)(馬場光太郎)


リバティwebより



【関連記事】
2016年12月20日付本欄 小池知事の豊洲移転問題は「八ツ場ダム中止」と同じ【大川隆法 2017年の鳥瞰図(3)】
http://the-liberty.com/article.php?item_id=12376


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